前田 康治

まえだ こうじ

前田 康治 Koji Maeda

生命学部 生体医工学科 准教授
出身:鹿児島県鹿児島市(鹿児島工業高等専門学校)
k.maeda.wf@cc.it-hiroshima.ac.jp

臨床工学技士に必要なのは「なぜ?」という好奇心と「やってみよう」という探究心。

前田先生のゼミでは、学生たちの手によってさまざまな医療機器の改善や開発が行われています。そうした「ものづくり」に携わることで触発される、彼らの好奇心や探究心こそ、臨床工学技士には大切、と先生は考えているのです。「医療機器の操作やメンテナンスを行うのがメディカルエンジニアの役割です。しかし、決して『誰かに言われるまま』ではいけない。自分から『なぜだろう』『やってみよう』と発想することが、臨床工学技士としての能力を成長させることにつながるのです」と先生は言います。

冷たくも温かくもなるペルチェ素子を用いて、注射の痛みを緩和。

臨床工学技士は医療現場で、多くの患者さんに出会います。患者の思いに触れ、力になりたいと感じることもあるでしょう。そんな時、モノづくりに携わった経験があれば、新しいデバイスや医療機器改善の提案ができるかもしれません。そんな臨床工学技士を育てるため、私のゼミでは学生に積極的に医療機器の開発に携わってもらっています。
ある学生たちが取り組むのは、「ペルチェ素子」という板状の半導体素子を利用し、患者の痛みを緩和する装置の開発です。採血や点滴時の注射の痛みは嫌なものです。度重なると苦痛も増大します。痛みを緩和するために氷や冷却材を利用する場合もありますが、ペルチェ素子を用いて痛みを緩和することを検討しています。
ペルチェ素子に電圧をかけると、一方は冷たくなり、もう一方は熱くなります。つまりペルチェ素子なら、患部を冷やして感覚を鈍らせるだけでなく、患部を温めて痛みを散らすという手法にも応用できるわけです。1つの装置で2つの機能を持たせられれば、活躍の場面も増えます。開発には時間がかかると思いますが、しっかりバックアップしたいですね。

左の白い正方形の板のようなものが「ペルチェ素子」。その下のタブレットPCの画面に表示されているのは、学生たちが考えたこの装置のデザイン。

ペルチェ素子を用いた痛みの緩和装置の開発風景。

心臓機能の補助装置に混入するエアを発見する。

「補助循環装置のエア混入監視システム」を研究する学生たちもいます。補助循環装置とは、心筋梗塞や狭心症などの患者に対し、心臓の機能を補助する装置のことです。この装置にエアが混入するのは珍しくなく、放っておいても人工肺から抜けていくため、大きな問題にはなりません。
しかし、どこからエアが混入するのか、原因がわからないのでは困ります。1~2ccのエアであっても、体内に入る可能性はゼロではありません。エアが肺に入ると肺が詰まるし、脳に入ると脳血管が詰まるなど、後遺症を引き起こすかもしれません。そこで、エアが入ってしまった時にアラートを出し、注意を促そうというわけです。
エアが混入すると、遠心ポンプから音が出ます。音が出るということは、振動しているということです。そこで加速度センサを置き、音を振動として捉えるのです。加速度センサを用いるのは、通常のマイクなどの場合、エア以外の環境音も拾ってしまい判別が難しくなるからです。
学生たちは、センサをどこにつければベストなのか?など、試行錯誤しながら研究を進めています。

補助循環装置に加速度センサを取り付け、データを収集して解析。エアを判別させる研究。

ゼミ取材 こぼれ話
「実際のものづくりに携わってみると『なんでこうなっているんだろう?』『こっちの方がいいんじゃないか』と、学生から声が上がるようになった」と語る前田先生。最初は先生の指示通りにしか装置を動かせなかった学生も、徐々に自分の発想で動かせるようになる。臨床工学技士にものづくりを経験させると、そんな効果も生まれるのです。「臨床の現場は、想像以上に厳しいものです。昨日まで装置を使っていた患者が、翌日に亡くなる場合もあります。そういう責任が臨床工学技士にはあるのです。決して受け身ではなく、自分の意志で進める力を身に付けてほしい」と、先生は願っています。