福原 輝幸

ふくはら てるゆき

福原 輝幸 Teruyuki Fukuhara

工学部 環境土木工学科 教授
出身:広島県(広島県立観音高等学校)
t.fukuhara.ek@it-hiroshima.ac.jp

バングラディッシュで、UAEで、東北で。世界中で快適な環境づくりを支援。

日本では、水道の蛇口からきれいな水が当たり前のように出てきます。しかし、世界に行くと、日本のように豊富な水資源に恵まれた国は、希有な存在であるとわかるでしょう。決してきれいと言えない濁った水を、十分な安全処理も施されないまま口にする。そんな地域に暮らす人々の方が、アジアやアフリカでは圧倒的に多いのです。こうした地域に足を運び、高度な機械や技術を活用しなくても環境が改善できる、という知恵を提供しているのが福原先生です。

太陽熱淡水化の技術で濁った水を蒸留し、飲料水として利用。

写真Aはバングラディッシュのパイガザ地区にある、貴重な水源です。大変濁ったこの水を、砂によってろ過する設備(PSF)は一応あります。が、PSFでは大腸菌や塩分、ヒ素などが除去できません。おまけに数が少なく、水を汲みに来る住民600人に対しようやく1人が使える、といった程度。大半の住民が待ちきれず、濁った水をそのまま汲み上げて使っている状況です。
そこで、太陽熱淡水化の技術を応用したろ過設備を考えました。と言っても、おおげさなものではありません。写真Bがその様子です。大きめのペットボトルのような透明容器を斜めに据え付け、中に濁った水を入れます。後は太陽光にかざすだけ。太陽の熱で温められた水が蒸発し、容器の内側に付着して水滴に戻ります。これを回収して飲料水として使用するのです。仕組みが単純なので壊れても住民たちが自力で直せます。一基あたりの費用が安く、バングラディッシュで手に入る材料ばかりなので、新設も容易。電気や燃料も不要で、ランニングコストもかかりません。
私は国内外のさまざまな地域で、住環境の改善に関わるこれらのプロジェクトに取り組んでいるのです。

写真A。バングラディッシュ・パイガザ地区にあるため池。地域の人々の貴重な水源だが、濁っており、塩分濃度等も高い。

写真B。太陽熱を利用した淡水化装置。仕組みが単純なので、現地の人々でも取り扱いが容易。

雨の少ないUAEで、水資源を最大限に活用して緑化を進める。

中東にあるUAEの降水量は年間で100~150mm程度。広島だと約1,500mmですから、10分の1以下しかありません。UAEではそれほど水が貴重な資源です。そういった地域で、節水を考慮しながら緑化を推進するプロジェクトにも参加しました。
簡単に言うと、ナイロンやポリエステルなどのポリマーを設置したマットを作成し、地面の下に敷きます。するとポリマーが水を吸着し、蒸発を防いでくれます。限られた雨を最大限に活用し、植物を枯れさせることなく生育できるのです。
まずは生育しやすい芝生で試してみた様子が、写真C、Dです。Cはポリマーマットなし、Dはマットありで、生育から35日後の状態を比較すると、明らかにマットありのエリアの方が青々と育っています。コスト面の課題もあってUAEのプロジェクトは現在中断しているのですが、機会があれば引き続き研究を進め、実用化したいですね。
こうした活動には、可能な限り学生を連れていこうと思っています。治安の問題があるのでどの国でも・・・というわけにはいきませんが、現地の様子を見て、人々と触れ合い、議論し合って解決策を見出す経験は、学生たちの貴重な財産になるはずです。

写真C。ポリマーマットを敷かずに芝生を育成、35日経過した状態。

写真D。ポリマーマットを敷いて芝生を育成、35日経過した状態。

津波によって、塩害に見舞われた東北の耕作地を甦らせる。

写真Eを見てください。耕作地の上に白い粉が広がっていますね。これは、塩なんです。世界では塩害に悩まされる地域がめずらしくありません。もちろんこんな土地で、作物など育ちません。
日本は塩害の少ない世界でも特異な国なのですが、実は写真Eは宮城県です。東日本大震災で耕作地が津波に襲われ、こんな状態になってしまいました。そこで研究室の学生らを連れて現地に行き、除塩に取り組みました。
除塩の方法には二つあります。一つは田んぼの下に排水溝を造り、上から水を流し塩とともに排出してしまう方法。しかしこれには大規模な工事が必要です。私たちは、コストの低い二つ目の方法を選択しました。田んぼに水をはり、土中の塩分を溶出させるのです。この場合、土質や気象などさまざまな条件によって、保水に必要な期間が変わります。最大の除塩効果を得るには、状況を吟味しなければなりません。私たちは現地に張り付いて実績と検証を重ねました。
環境の改善で困っている所はまだまだあります。さまざまなプロジェクトに参加し、地域に貢献するための知見を提供していくつもりです。

写真E。東日本大震災の津波によって、塩まみれになってしまった耕作地。

ゼミ取材 こぼれ話
以前は福井に住んでいた福原先生。降雪量の多い地域では、車が雪道で立ち往生する、というトラブルが毎年発生します。そこで先生が取り組んだのは"地中熱融雪システム"。「地中にパイプを巡らし、水を循環させます。冬だと地中は地表よりはるかに温かいので、地中を通るうちに温められた水が地表近くに来ると、道路の雪を融かしてくれます。地熱を利用したシステムなので余分なエネルギーもかかりません」。先生はこのシステムの導入により、環境賞も受賞しています。「私は広島工業大学の卒業生です。その観点で言うと、ゼミの学生たちは教え子というだけでなく、私の後輩でもあるわけです。彼らとともに、いろいろな分野にチャレンジしていきます」。

地中熱融雪システムにより、土木学会の環境賞を受賞。