竹田 宣典

たけだ のぶふみ

竹田 宣典 Nobufumi Takeda

工学部 環境土木工学科 教授
出身:福岡県北九州市(門司高等学校)
n.takeda.4g@it-hiroshima.ac.jp

コンクリートも"病気"になる?コンクリートを健康に保ち、長く使い続けるには。

ビルや橋、ダムに道路にトンネル...私たちの身近にあるさまざまな建築物・構造物の大半は、コンクリートによって造られています。頑丈なコンクリートですが、長い年月が経つと人間の体と同じように老化したり、"病気"にかかったりもするのです。コンクリートの劣化は、道路やトンネルが崩れるなどの大事故につながりかねません。そこで「コンクリートを長持ちさせる研究」を進めるのが竹田先生。劣化を防ぐ方法だけでなく、コンクリートの新たな活用法などについても研究を進めています。

長い年月のうちに、さまざまな原因でコンクリートは劣化していく。

人間と同様、コンクリートにも寿命があります。一般の構造物で50年、空港など重要なインフラで100~150年とされますが、15~20年で劣化が目立つケースもあります。
劣化の要因となるのが、さまざまな"病気"です。「塩害」「中性化」「アルカリシリカ反応」などいろいろな種類があり、それぞれで原因が異なります。これらを予防したり、あるいは劣化してしまったコンクリートの回復手段を考えるのが、私の第一のテーマです。
塩害とは、長い年月の間にコンクリート内に塩分が侵入し、鉄筋を錆びさせてしまう現象です。コンクリートの内部には、小さな孔がたくさん空いています。この孔に塩分が入ってしまうのです。緻密に造れば内部の孔を減らすことはできますが、これだけ広範に使われる建材を、全ての建設現場で緻密に造ろうとしても、限界があります。
同様に、コンクリートの中の孔に入った水分が凍り、コンクリートを割ってしまう凍害という現象もあります。またアルカリシリカ反応とは、コンクリート内に含まれる石のある種の成分が膨張しコンクリートを損傷する現象のこと。数々の"病気"を防ぎ、健康を維持するには、定期的"診断"と"治療"が欠かせません。

コンクリートも経年で劣化する。安全性を保つには、定期的な点検と補修が欠かせない。

塩分が侵入しても鉄筋を錆びさせないよう、表面をコーティング。

塩害に侵されたら、コンクリートの塩分に侵された部分をえぐり取るしかありません。これは手間もお金もかかる上、数年後、再び塩害が発生しないとも限りません。
問題は内部の鉄筋の錆ですから、錆びない鉄筋を使えばいいのです。写真Aを見てください。これは鉄筋が錆びないよう、表面を青い塗料でコーティングしました。これなら、鉄筋内部まで錆が進行するのを抑えてくれます。
ただ、この青いコーティング鉄筋には、弱点があります。表面がつるつるとしていて、コンクリートとの接着力が少し低下します。そこでもうひと工夫したのが、グレーの建材。これは塗料に砂を付けて、表面をザラザラさせたもの。これなら十分に接着します。このグレーの建材は、私が前の職場で開発したものです。ほかに、コンクリートを全面的に塗料でコーティングし、小さな孔をふさぐことで水分や塩分の侵入を防ぐ、といった方法もあります。
実際の現場では、要因は一つだけでなく、いくつかが関連し合ってコンクリートを劣化させている、というケースもめずらしくありません。こうなると対策も複雑になります。さまざまな知恵を駆使しないと「コンクリートの長持ち」は実現できないのです。

写真A。右は、青い塗料をコーティングして錆びにくくした鉄筋。左は、グレーの塗料に砂を付けて表面をザラつかせ、すべらないように改良したもの。

震災で発生した瓦礫を、震災で失われた消波ブロックづくりに再利用。

もう一つのテーマが、「コンクリートを軸とした資源の有効活用」です。
東日本大震災の津波で、東北の海岸線はめちゃくちゃになりました。再生のため何万個もの消波ブロックが新たに必要です。これとは別に、震災は400万トンものコンクリートの瓦礫を発生させました。これらの処分も考えないといけません。
そこでいっそ、消波ブロックの中に瓦礫を詰め込み、コンクリートで固めてはどうか?と思いついたのです。こうすれば使用する建材の量は減り、同時に行き場のない瓦礫が処分できて、一石二鳥です。
プレパックドコンクリートという工法を用いて、現地で作ってみました。すると東北の寒さが影響し、コンクリートがなかなか固まりません。ならば、と通常はコンクリートと真水を混ぜ合わせるところを、海水に変えてみました。鉄筋とは無縁の消波ブロックなら、錆の心配もありません。むしろ寒冷地だと、海水の成分はコンクリート凝固を早める促進剤の役目を果たすのです。
海水を使用したコンクリートの開発で、私たちは2015年「ものづくり日本大賞」の内閣総理大臣賞を受賞しました。今後もさまざまな研究を深め、新たな維持管理法や活用法の開発に寄与したいと思います。

消波ブロックの外形に瓦礫を詰め込み、骨材として使用。そこにセメントと海水を混ぜ、資源再利用型の消波ブロックを造る。

ゼミ取材 こぼれ話
「"海水を使用したコンクリート"の将来性は高いと思います」と語る竹田先生。鉄を錆びさせるので、普通の鉄と同時には使えませんが、コーティングした鉄筋を使えば問題はないし、メリットも大きいらしいのです。「コンクリートの凝固が早いし、気密性も高まる。世界を見渡すと、日本のように水資源に恵まれた国ばかりではありません。また国内でも離島など、真水の調達に困る地域があります。そういう地域でも、周囲には海水が豊富にあります。海水で構造物が造れるならやりたい、と考える人や国は多いのです」。実際、先生の研究は、海外の研究者や技術者から高く注目されているのです。