村田 卓雄さん

これからも「挑戦」
~ワールドガーデンコンペティション最優秀デザイン賞連続受賞!~

有限会社 ムラタ造園

代表取締役

(広島工業大学建築学科 1972年卒)

ワールドガーデンコンペティション最優秀デザイン賞受賞

今年(2004年)、静岡県浜名湖で開催されている花博で行われたワールドガーデンコンペティションに日本代表として出場し、最優秀デザイン賞を受賞いたしました。ワールドガーデンコンペティションとは、世界各地で活躍している有名なガーデナーが技やアイデアを披露し競い合う大会で、毎年世界各国で開催されております。(昨年の開催国はオランダでした。)日本では、2回目の大会となり第1回大会に引き続いての連続受賞で、大変光栄に思っています。

2004年ワールドガーデン
コンペティション作品(1)

受賞作品のコンセプト

今回の浜名湖花博の作品は、「聖域のある庭-妖精の潜む庭-」と名づけ、居間と寝室の間に人間が手を入れてはいけない領域[聖域]を設けました。そこは、ブナや山椿を植え込み、落葉や倒木を置いた原生林をイメージした空間です。騒然とした日常から離れ、[聖域]では、忘れかけていた古くから日本人の心の奥底に宿る自然に対する敬虔な気持ちが蘇ります。
そして、鳥のさえずりや虫の声に耳を傾け、木々のざわめきや木漏れ日の暖かさを感じることで、自然の豊かさや生命力に気づかされることでしょう。

また、2001年の第1回大会では、「食の庭、農の庭」と名づけ、じっくりと自然と向き合い、植物や実りと関わり合う-生産する庭-をテーマにデザインしました。利便性ばかりを追い求める暮しから、多少時間がかかり不便さを感じても、そのプロセスから自然の本当の豊かさに触れる空間を作りました。麦や蕎麦栽培ができる庭で構成されており、住宅の周りには柿木を植栽し、タンポポやツクシ、オオバコといった昔から日本に自生する植物をグランドカバーとして植栽しました。

これら2作品の根底には、現在の住環境に対しての私の思いがあります。自然はコントロールできるものだと驕り、自然を支配し、征服してきた生活を省み、21世紀の住空間は、自然本来の姿と向き合い、自然と共栄・共存していく必要があるのではないでしょうか。

2004年ワールドガーデン
コンペティション作品(2)

2001年ワールドガーデン
コンペティション作品

造園と建築

現在、造園士としていろいろな庭を作庭していますが、庭をデザインする上で建築士として働いた約10年間が大変貴重な経験となっています。
私は、1968年広島工業大学建築学科に入学しました。カップラーメンを持参し、研究室に閉じこもって徹夜で設計図を描いていた当時のことは、今でも鮮明に思い出されます。

卒業後は、市内の設計事務所に勤務し、マンションやホテルなどの建築デザイン設計を手がけました。自分のデザインした建築物が形となった瞬間は、最大の喜びを感じました。しかし、私には幼少のころから憧れていた職業がありました。庭師です。小学校から帰ると繁茂していた築山の植木が、ものの見事に剪定(せんてい)されているのには驚きました。それからというもの父に大ハサミを買って貰い、家に出入している庭師についてまわり、真似事でハサミを動かしたり、小さな庭を造ったりして遊んでいました。ものづくりが根っから好きな少年だったようです。

建物をデザインする建築士はものづくりに携わる仕事ですので、私に向いた職業だったと思いますが、30歳過ぎたころから子どものころの夢だった、庭造りという仕事に憧れを抱くようになりました。建築士は、デザインし図面を描きますが、実際にそれを形にしていくのは、さまざまな現場の職人です。自分のデザインしたものを自身で施工できたらという思いが強くなったのかもしれません。

実際には、図面を基に現場で施工する段階では、建築とは随分違っていました。机上ではうまくいく予定の樹木を現場に入れてみると、何か違うのです。均一、画一化され工場生産された資材とは違い、自然の力で作り出された樹木などの材料は、同一の規格であっても全く同じ物はありません。素材の美しさを引き出すには、造り手の経験や感性が必要とされます。

最近の造園という仕事は、ひと昔前の庭造りとはずいぶん変わってきています。庭という限られた範囲だけでなく、いろいろな構築物を含め、エクステリア全体を創作する仕事が増えてきています。住空間全体を視野に入れ、住居と庭をトータル的にデザインする感性が必要とされてきている現在、建築士としての経験が非常に役立っています。人々により豊かな住空間を提案するといった根本的なところは、建築デザイナーも造園デザイナーも何ら変わりはありません。

会社を設立して今年で17年目を迎えます。沢山の出会いがあり、個人庭園、茶庭、病院施設・ビルの屋上緑化、特老施設園芸療法庭園など、さまざまな庭を手がけて参りました。近ごろでは、クライアントの価値観が非常に多種多様化して、作庭に対するニーズもさまざまです。一つひとつの思いを形にでき、完成した庭を前に喜んで下さるお客様の顔を見るときに、何よりの幸せを感じます。また、これからの作庭では、私のテーマである自然と共栄・共存する住空間を少しでも提唱できればと考えています。

2003年作庭(1)

2003年作庭(2)

さらなる「挑戦」

2001年、2004年とワールドガーデンコンペティションに参加し、外国の著名なガーデナーのバイタリティには感心させられました。審査委員長であるJulian Dowleやイギリス代表のDavid Stevensはいずれも60代後半の年齢ですが、今も現場で作庭に携わっています。しかも毎年各国で開催されるガーデニングショーにも出展しているそうです。

日本では、定年後の第2の人生を考える年齢ですが、外国のガーデナーの世界では無用のようです。造園という職種の社会的評価の違いもあるかもしれませんが、それ以上に自然に対する細やかな感性と庭造りに対しての貪欲さが、彼らの実践力や行動力となっているのだと思います。

私くらいの年齢になると守りに入ってしまい、物事を受身にとらえることが多くなってきますが、ワールドガーデンコンペティションでのさまざまなガーデナーとの出会いで多くの刺激を受けました。機会があれば、これからもショーガーデンに作品を出展し、驚きと感動を人々に与えたいと思っています。また、外国のガーデナーからイギリスでの仕事の誘いも請けています。新たな挑戦が始まります。