2015年度入学式式辞(2015年4月3日)

例年より遅いと感じられていた春の足取りですが、先月の終わりから一気に加速し、日本列島は南から西から、北へ東へと桜色に染まり始めています。本学キャンパス内の桜も、皆さんの入学をお祝いするように綺麗に咲いています。

本日、大きな可能性に瞳を輝かせて、広島工業大学に入学してこられた、大学院博士後期課程2名、大学院博士前期課程36名、学部1,202名、3年次編入13名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私たち広島工業大学教職員一同は、皆さんのご入学を心より歓迎申し上げます。

高いところから失礼しますが、新入生の勉学を今日まで支えてこられた保護者の皆様、ご子女のご入学、誠におめでとうございます。ご子女の本日の晴れ姿をご覧になって、大変お喜びになっておられるものと拝察し、学校法人鶴学園、そして広島工業大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。これから、大学院、学部でご子女を預からせていただき、立派な社会人として活躍することができるよう、教職員一同、精一杯努力してまいります。よろしくお願い申し上げます。

ご来賓の皆様におかれましては、本日は、新年度早々でご多忙のところ、入学式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。新入生の門出をお祝いくださいましたことに、厚く御礼申し上げます。

さて、新入生の皆さんは、大学および大学院入学という目標を達成され、新しいステージに立ち、それぞれの夢や目標に向かってこれからの学生生活をどのように過ごそうかと、いろいろな思いを巡らせていることでしょう。専門的な研究に取り組んでみたい、最新の技術を身に付けたい、クラブ活動で身体を鍛えて記録を伸ばしたいなど、やってみたいことはいくつもあると思います。その一方で、辛かった受験勉強を振り返って「ホッ」と一息ついているところかもしれません。

しかし皆さん、先行きが見通せない今日の状況を考えますと、「ホッ」とする余裕はそんなにありません。景気が上向き、就職も好調に推移していますが、このまま持続するのかどうか、まったく分かりません。「就職氷河期」とまで言われたあの厳しい就職難の時代が、また巡ってくるかもしれません。今、はっきり言えることは、地球規模の競争を強いられるグローバル化、スピードが勝負の情報化は、間違いなくこれからも進展していくということです。そんな時代を生き抜くための準備をすぐに始めなければなりません。

皆さんには幅広い教養力、深い専門力を身に付けるだけでなく、魅力あふれる人間力を養ってほしいのです。なぜなら、デジタル社会とか情報化社会と言われ、イエスかノーかで割り切る時代だからこそ、より人間力が重要になると思うからです。相手に安心感を抱かせる説得力、理解させるコミュニケーション能力が今まで以上に求められます。何事にも興味を持ち、積極的に関わり、多様な人々との触れ合いを大事にしてください。そこから人間としての芯の強さ、どんなことにも対応できるたくましさが培われると思います。

そこで皆さんに、私から学生生活で取り組んでほしい2つの提案をします。ぜひチャレンジしてください。

一つは、「学びの姿勢をこれまでとは違うスタイルに変えてください」ということです。皆さんの勉強はこれまで、どちらかと言えば先生などから教えてもらい、それを知識として集積するという受け身のスタイルが多かったのではないでしょうか。もちろん、大学においても教えてもらうことは多くあります。新入生の皆さんも、大学に入学したことによって、専門的なことを教えてもらうことを期待しているでしょう。私たちは、その期待に応えるべく、多彩で体系的なカリキュラムを準備していますので、たくさん学んでもらいたいと思います。

しかし、何より大事なことは、自ら学ぶべき課題を見つける、その解決に向け試行錯誤を繰り返し、自分なりの判断を下すといった能動的な姿勢なのです。これからの時代を生きる皆さんに求められている能力は、「自ら問い掛けできる能力、自ら調べができる能力、自ら考えを構築する能力」といったものです。これらの能力は、能動的な学びを通してしか身に付けられないのです。思い切って切り替えてください。能動的に取り組めば、他人と方法や方向性が異なることもあるでしょう。それこそが個性の発揮であり、画一的な規格人間とは違う魅力あふれる人間性、倫理観を養うことができると思います。

もう一つは、「スマートフォンを手放そう」ということです。皆さん、驚かれたと思います。インターネットや携帯電話、スマートフォンの普及で、世の中は大変便利になりました。すぐに情報を入手したり交換したりできます。すっかり私たちの生活の中に入り込んでいます。皆さんの中には「片時も手放すことができない」と言う人もいるでしょう。実際、私もスマートフォンにはずいぶんと助けられています。

しかし、あまりに手軽に情報が入手できる弊害も指摘されています。論文などの「コピペ」、まる写しが社会問題になりましたし、「考える」という手間暇かける作業を人間から奪ってしまいます。また、あふれ返る情報のどれが正しいのか、また有益なのか、情報を選択する知識や能力、情報に惑わされない自分の判断力が問われます。

何より気になるのは、最近の若い人たちがスマートフォンなどで収集したり、やりとりしたりしている情報が、人間力を高めることに結びついていないのではないかということです。娯楽のため、いわゆるサブカルチャー用のツールになっているような気がします。

大学は深い探究心に基づく、本当の知識を身に付ける場です。その意味で、ここはやはりスマートフォンではなく、紙の本とじっくり向き合い、体験を重ねて時間をかけて学んでいってほしいのです。皆さんにはたくさんの本を読んでほしいとの願いを込めて、あえて「スマートフォンを手放そう」と過激な言葉で訴えた次第です。学生生活においてどれくらい書物を読んだか、その努力の差は、その後の人生において大きな差となって現れると思います。

広島工業大学は、学校法人鶴学園という組織の中にある大学です。鶴学園には、広島工業大学をはじめとして、6つの学校があります。そして学園には、共通する教育理念として、二つの大きな柱があります。一つは建学の精神『教育は愛なり』、もう一つは教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』です。私たちが何か迷ったときに、立ち返る軸というものです。

建学の精神『教育は愛なり』という言葉は、本学園の教育の象徴である鶴虎太郎先生の言葉です。この"愛"とは、「想い」を持って教育にあたることです。私たちは、「学生の現実にきちんと向き合い、どういう教育をどのようなプログラムで展開すべきか」、「それが学生の何を養うことになるのか」、そして「それがどのような人材育成につながるのか」という「想い」を常に持ち、学生の可能性を信じて教育に取り組んでまいります。

教育方針の『常に神と共に歩み社会に奉仕する』という言葉は、本学園創立者の鶴襄先生の言葉です。そこには、しっかりとした倫理観を持ち、何事にも感謝をしながら、真面目に努力し、額に汗して社会に奉仕する人間になってもらいたいという願いが込められています。私たちは、それがかなうように「現在行っている教育方法、指導方法はこれでいいのか」、「もっと工夫できることはないか」、「学生に何をしてやればよいか」という問い掛けを常にしながら、教育の質の向上を目指してまいります。

本日、広島工業大学へ入学してこられた皆さんには、基礎教育と専門教育をしっかりと学び、高い倫理観を身に付け、社会に奉仕する人間になってもらいたいと願っています。私たちはそれが達成できるように、建学の精神と教育方針に則り、今日から皆さんを育ててまいります。

もちろん、大学は勉強ばかりするところではありません。多くの友人を作ることはもとより、クラブ活動で汗を流して体を鍛えること、インターンシップにより社会の勉強をすることなど、皆さんが成長する機会はたくさん用意されています。健康に十分注意しながら、さまざまな体験を積んで充実した学生生活を送ってください。

近い将来、皆さんが技術立国日本を背負う倫理観ある技術者として活躍されることを期待し、本日の入学に際しての式辞といたします。

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