2014年度卒業式式辞(2015年3月21日)

2014年度に卒業・修了された皆さんへ

例年と比べて雪が多く、寒い日が続いた冬の季節も終わり、図書館下の紅白の枝垂れ梅もきれいに咲いています。春の訪れを感じます。

皆さんがいよいよ学び舎から巣立つ今日のよき日に、多数のご来賓ならびに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成26年度広島工業大学大学院学位記、および広島工業大学卒業証書・学位記授与式を盛大に挙行できますことは、本学の光栄とするところであり、教職員を代表して心から御礼を申し上げます。

本日、ここに集われた906名の学部卒業生、24名の大学院博士前期課程修了生、おめでとうございます。この卒業と修了の式にあたり、これまで皆さんが尽くされた努力と研鑚に対し、学校法人鶴学園と広島工業大学を代表し、敬意を表するとともに、心よりお喜びを申し上げます。

この栄えある日に、多くのご来賓の皆様にご臨席を賜りました。ご来賓の皆様におかれましては、年度末を迎えご多忙のところ、卒業生・修了生の門出をお祝いくださいまして、誠にありがとうございます。

そして何よりも、長年にわたり、本学の教育運営に、深いご理解とご支援を賜りました保護者の皆様、高いところから失礼いたしますが、ご子女のご卒業・修了、誠におめでとうございます。ご子女の本日の晴れ姿をご覧になって、大変お喜びになっておられるものと拝察し、心からお祝いを申し上げます。

卒業生および修了生の皆さんは今、本学で過ごした学生生活のさまざまな出来事を思い浮かべていることでしょう。期待と不安を抱えて臨んだ入学式、そのすぐ後に開催されたオリゼミ、体育祭や工大祭、そしてクラブ活動で流した汗と涙。夜遅くまで仲間と一緒に打ち込んだ卒業研究。厳しい社会経済情勢のもとで取り組んだ就職活動など、一生忘れることのない貴重な思い出をたくさん作ったことと思います。

本学は校祖鶴虎太郎先生の遺訓「教育は愛なり」を建学の精神に据え、学園創立者の鶴襄先生が定めた教育方針「常に神と共に歩み社会に奉仕する」を教育の根幹とし、社会に奉仕する倫理観ある技術者の育成を目的として教育にあたってまいりました。皆さんはそれによく応えてくれました。その頑張りをたたえるとともに、皆さんが地域社会で、日本で、そして世界で、しっかりとした倫理観、道徳観に裏打ちされた技術者として活躍される人材であると、自信をもって世に送り出します。

さて、今年は戦後70年の節目の年です。振り返ってみますと、我が国は戦後、高度経済成長を経て安定成長に移り、バブル経済を経験しました。1990年代にバブル経済が崩壊し、それからの長期景気低迷期は、「失われた20年」とも言われました。今日、経済政策「アベノミクス」で景気回復の兆しは見えますが、今後どうなるか不透明です。また、経済のグローバル化により日本企業の海外進出が進み、国内産業の空洞化が問題になりました。グローバル化という外圧に、我が国はどう対応するのかも問われています。

思えば、今日と似た状況の時代がありました。そう、幕末です。鎖国政策を続けていた日本に対し、諸外国が開国を迫り、さらに植民地化しようという、まさに外圧に押されて国家存亡の危機でした。それに立ち向かったのが勝海舟や吉田松陰、坂本龍馬をはじめとする多くの志士でした。テレビの大河ドラマで取り上げられています吉田松陰が、なぜ黒船に乗り込み密航しようとしたのか、考えてみてください。私は彼が困難に立ち向かうチャレンジ精神を発揮したからだと思います。その勇気が、その後の歴史を変えたと言っても言い過ぎではないでしょう。

今日の我が国や世界情勢を考えますと、さまざまな課題が山積し、私たちの行く手に壁のように立ちはだかっています。まさに幕末、それ以上に大きな歴史の分岐点に私たちは立っていると言えるでしょう。皆さんも、先行きが見通せない荒海に向かって船出するような不安な心境かもしれません。

そこで、皆さんにどうしても伝えておきたいことがあります。それは、目先のことに一喜一憂したり、周囲に振り回されたりするのではなく、自分の頭でしっかりと考え、自分の判断を信じて行動してほしいということです。何事にも恐れず、諦めず、勇気を持ってチャレンジしてほしいのです。

吉田松陰の行動は、外圧に促された結果でもありました。皆さんもプレッシャーを受けたとき「いったいどうなるのだろう」と立ちすくんで心配したり、傍観者になったりするのでなく、松陰のように、ここはあえて外圧を利用して変革の起爆剤にしてやるぞ、というくらいの気概を持ってほしいと思います。

ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈先生が88歳の昨年、ある雑誌で対談され、次のように人生を振り返っておられました。「体験を通して言えるのは、自分で自主的に物事を判断し、選択しながら生きることがいかに大事かということです」と。そして「目の前にある壁をいかに乗り越えるか、というチャレンジ精神がなくては充実した人生は送ることができない」と断言され、「最近の傾向としてリスクを取らない人が多いように思いますが、それが誤りであることを私は警告しておきたい」と述べておられます。リスクから逃げないで、チャレンジ精神を持ってもらいたい、というこの江崎先生のメッセージは、これからの時代を担ってもらいたい人たち、すなわち皆さんへのものです。

さらに私は、皆さんへ、最後まで努力してもらいたいということで、人気作家の村上春樹さんの本に出てくる話を紹介します。村上春樹さんは、ご自身の趣味であるマラソンをテーマに、走ることについての本を出されています。読んだ人もいるでしょう。

マラソンで終盤に差し掛かった時、「もう駄目」と諦めるか、ギリギリのところで「もう一踏ん張り」と唱えてゴールまで持ちこたえるか、それは走る本人次第であるということです。そこにマラソンの奥義があると村上さんは言います。まったくその通りだと私も思います。

それはマラソンに限ったことではありません。勉強や研究で行き詰まったことは、皆さんも経験されているでしょう。これから社会に出ても同様です。さまざまな壁にぶつかることでしょう。その時、マラソンと同じように「もう一踏ん張りしよう」と勇気を持ち、知力を振り絞ってほしいのです。

最後にもう一つ付け加えておきます。それは夢を持ち続けてほしいということです。夢を追い求めてほしいのです。そうすれば自ずと壁は乗り越えられ、リスクを自分の力に変えることができると思います。

皆さんに「夢を諦めるな」とのエールをこめて、吉田松陰の言葉を贈ります。

夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。

以上、私からの式辞とします。

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