2013年度入学式式辞(2013年4月3日)

2013年度に入学された皆さんへ

先月の中ごろから春暖が一気に加速し、日本列島は南から西から、東へ北へと桜色に染まり始めています。キャンパス内の桜も綺麗に咲いています。

本日、大きな可能性に瞳を輝かせて、広島工業大学に入学して来られた、大学院博士後期課程4名、博士前期課程26名、学部1144名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私たち広島工業大学教職員一同は、皆さんのご入学を心より歓迎申し上げます。

高いところから失礼しますが、保護者の皆様、ご子女のご入学、誠におめでとうございます。学校法人鶴学園、そして広島工業大学を代表し、心よりお喜びを申し上げます。これから、大学院、学部でご子女を預からせていただき、立派な社会人として活躍することができるよう、教職員一同、精一杯努力して参ります。よろしくお願い申し上げます。

また、ご来賓の皆様におかれましては、本日は、新年度早々でご多忙のところ、新入生の門出をお祝いしてくださいまして、誠にありがとうございます。

広島工業大学は、学校法人鶴学園という組織の中にある学校です。鶴学園には、広島工業大学をはじめとして、6つの学校があります。そして学園には、共通する教育理念として、二つの大きな柱があります。一つは建学の精神『教育は愛なり』、もう一つは教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』です。

建学の精神『教育は愛なり』という言葉は、本学園の校祖である鶴 虎太郎先生の言葉です。この"愛"とは、「想い」を持って教育にあたること、つまり「学生の現実にきちんと向き合い、どういう教育をどのようなプログラムで展開すべきか」、「それが学生の何を養うことになるのか」、そして「それがどのような人材育成につながるのか」という「想い」を常に持ち、学生の可能性を信じて教育にあたることです。

教育方針の『常に神と共に歩み社会に奉仕する』という言葉は、本学園創立者の鶴 襄先生の言葉です。そこには、しっかりとした倫理観を持ち、何事にも感謝をしながら、真面目に努力し、額に汗して社会に奉仕する人間になってもらいたいという願いが込められています。私たちは、それが叶うように「現在行っている教育方法、指導方法はこれでいいのか」、「もっと工夫できることはないか」、「学生に何をしてやればよいか」という問いかけをしながら、教育の質の向上を目指して参ります。

さて、いま皆さんは、大学院および大学入学という目標を達成され、新しいステージに立っています。そして、これからの学生生活をどのように過ごすか、いろいろな夢や目標を持っていることでしょう。専門的な研究に取り組んでみたい、最新の技術を身に付けたい、クラブ活動で身体を鍛えて記録を伸ばしたいなど、いくつもあると思います。

ただ、その夢や目標を達成する前に、さまざまな難局が、皆さんの目の前に現れてくることが予想されます。そういったときに最も大切な心構えについて、二つお話をします。

まず一つは、難局に正面から向き合って、それを乗り切るという気概を持つことです。人間は残念ながら、心に弱い部分を持っています。その結果、本当に苦しい時、人に嘘をついたり、相手を平気で裏切ってしまう人がいます。それは決してあってはならないことです。人は、どんなことがあっても、正しい道を歩まなければなりません。いつの時代でも、燃えるような情熱を持って、真面目に、一生懸命に努力を重ねること、そして、少しばかりの成功に酔いしれることなく、謙虚さを忘れないことが大切です。そうすることによって道は必ず拓けて参ります。

もう一つ重要なことは、一人だけで前へ進んで行かないことです。将来はこんなことをしてみたい、というある程度の方向性をまず見つけ、それを達成するために必要な環境に身を置く努力をすることが大切になってきます。その環境の中で、身近にいる人たちの話を聞いているだけでも、自然と感化され、視野が広がっていくものです。要は、同じ夢や志を持った仲間のもとで揉まれることが重要で、それに自分の努力を加えていくことで成長して行きます。その必要な環境の中に、いま、皆さんはいます。皆さんの周りにいる新しい友人、先輩、先生方との交流を積極的に持って、皆さんが早くこの学校に溶け込み、卒業するときに夢や目標を達成されることを願っています。

では、実際に夢や目標を達成するために、皆さんは、大学生活において、どのようなことに注意したらよいでしょうか?

私は、皆さんに、何よりも自分の「学びの姿勢」に注意を払ってもらいたいと思います。はっきり言えば、「学びの姿勢を変えましょう」と呼びかけたいのです。

皆さんのこれまでの勉強は、どちらかと言えば、先生などから教えてもらう、それを知識として集積するという受け身のスタイルが多かったのではないでしょうか。もちろん、大学においても教えてもらうことは多くあります。新入生の皆さんも、大学に入学したことによって、専門的なことを教えてもらうことを期待しているでしょう。私たちは、その期待に応えるべく、多彩で体系的なカリキュラムを準備しています。

皆さんには、たくさんのことを学んでもらいたい。ただそのとき、「能動的に学ぶ」ということをいつも念頭に置いていただきたいのです。何より大事なことは、自ら学ぶ、自ら取り組むといった能動的な姿勢なのです。なぜなら、今日、皆さんに求められている能力は、「自ら問いかけできる能力、自ら調べができる能力、自分の考えを構築する能力」といったものです。これらの能力は、能動的な学びを通してしか身に付けられないのです。

皆さんは、グローバル化と情報化が大変なスピードで進む時代を生きなければなりません。こういう社会の中を生き抜くには、新しい能力がことのほか求められるのです。今日、開発途上国の若者の生きるエネルギーには、目を見張るものがあります。それに比べ、日本の若者の元気のなさが話題にされます。彼ら開発途上国の若者は、学びに多くの時間をかけているだけではありません。学び方が違うのです。彼らの積極的な「学びの姿勢」こそ意識すべき点です。

もう一つ注意してもらいたいことがあります。それは、自分に与えられた時間に責任を持って、有効に使うことです。1日24時間のうち、睡眠や食事など生活に必要な時間を差し引くと、自分で使える時間は14時間もあります。1週間では約100時間、1年間では約5,000時間にもなります。ここから大学での授業時間を引いてみましょう。月曜日から金曜日まで、朝9時から夕方5時までの8時間を大学にいたとしましょう。大学に滞在する時間は、1週間で40時間となります。これに前期・後期15週ずつを掛けてみると、1,200時間となります。先ほどの年間に使える時間の5,000時間から、大学の滞在時間1,200時間を引くと、残りは3,800時間もあることになります。この自分で管理できる時間を、作家の城山三郎さんは、「無所属の時間」と言っています。皆さんの「無所属の時間」は、1年間に3,800時間もあるのです。どの組織にも属さない「無所属の時間」をどう活用するか、それによって人間の大きさが決まってきます。忙しい忙しいと言って、自分の時間が持てないと嘆く人がいますが、実は一人ひとりは毎日、自分の個性を磨くための「無所属の時間」をかなり持っているのです。

ベートーヴェンの交響曲『運命』は一つですが、小澤征爾、カラヤン、バーンスタイン、それぞれの名指揮者が指揮をすると、演奏時間も曲の強弱もそれぞれ異なります。このように、自分に与えられた時間をどのように使い、何を創造するかは、その人次第なのです。「無所属の時間」を有意義なものにするか、無益なものにするかは、皆さんの意識と設計力にかかっています。大学生になると、自分に責任を持つことが求められるようになります。一人ひとりが、自分の人生設計につながるような、充実した大学生活を送れるようにしてください。そうすれば、その先にある豊かな人生が見えてくるはずです。

なお、大学は勉強ばかりするところではありません。クラブ活動やインターンシップなどを通して、多くの友人を作ったり、社会の勉強をする機会もたくさん用意されています。健康に十分注意しながら、さまざまな体験を積んで充実した学生生活を送ってください。

私たちは今日から皆さんに、建学の精神と教育方針に基づいた教育を展開してまいります。基礎教育、専門教育をしっかりと学び、高い倫理観を持った人間として、大きくたくましく成長されることを楽しみにしています。そして、やがて皆さんが、技術立国日本を背負う倫理観ある技術者として活躍されることを期待し、本日の入学に際しての式辞といたします。

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