2011年度入学式式辞(2011年4月4日)

2011年度に入学された皆さんへ

春の訪れが例年より少し遅いと感じられる今年ですが、皆さんの入学を歓迎するように、桜の花がきれいに咲き始めました。本日、大きな可能性に瞳を輝かせて、広島工業大学に入学してこられた、大学院52名、学部1,129名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
昭和36年に広島工業短期大学として誕生した広島工業大学は、今年、創立50周年を迎えます。皆さんは、その記念すべき年の入学生です。50周年を新たな出発点として、皆さんと私たちとで、本学のさらなる発展を目指していきましょう。
高いところから失礼しますが、保護者の皆様、ご子女のご入学、誠におめでとうございます。学校法人鶴学園、そして広島工業大学を代表し、心よりお喜びを申しあげます。
また、ご来賓の皆様におかれましては、本日は、ご多忙のところ新入生の門出をお祝いしていただきまして、誠にありがとうございます。

広島工業大学は、学校法人鶴学園という組織の中にある学校です。鶴学園には、広島工業大学をはじめとして、6つの学校があります。そして学園には、共通する教育理念として、二つの大きな柱があります。一つは、建学の精神『教育は愛なり』、もう一つは、教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』です。
建学の精神『教育は愛なり』という言葉は、本学園の校祖である鶴 虎太郎先生の言葉です。この“愛”とは、「想い」を持って教育にあたること、つまり「学生の現実にきちんと向き合い、どういう教育をどのようなプログラムで展開すべきか」、「それが学生の何を養うことになるのか」、そして「それがどのような人材育成につながるのか」という「想い」を常に持って教育にあたることです。
教育方針の『常に神と共に歩み社会に奉仕する』という言葉は、本学園創立者の鶴 襄先生の言葉です。そこには、何事にも感謝をしながら、そして真面目に努力し、額に汗して社会に奉仕する人間になってもらいたいという願いが込められています。私たちは、それが叶うように「現在行っている教育方法、指導方法はこれでいいのか」、「もっと工夫できることはないか」、「学生に何をしてやればよいか」という問いかけを常にしながら、教育の向上を目指しています。

私たちは、建学の精神と教育方針にのっとり、今日から皆さんを大切に育ててまいります。
ただ、皆さんを暖かく迎えるこの日を前にした3月11日に、東北関東大震災が発生しました。巨大地震と大津波は、日本にとって戦後最大の災害となりました。それぞれの土地で真面目に、一生懸命に生きてきた方々が、突然に訪れた大災害で大切な命を一方的に奪われたり、先祖代々の土地や家を一瞬の波で破壊されてしまったりするのをテレビで見て、自然界の強大な力とそれに立ち向かう人間の力のなさを再認識し、哀しみと儚さをしみじみと感じました。
また、なお続く断続的な余震、交通機関および電力インフラの制限など、国内では厳しい状況が続いています。未曾有の大災害で犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。重ねて、大災害を被られた多くの皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
私たちは、今こそ、一人ひとりが相互に助け合い、励ましあい、すべての力を結集して復興支援に取り組み、この国難を乗り越えて行かねばなりません。

私は、これまで日本には、大きな危機が2度あったと思います。1つは、幕末です。鎖国政策を続けていた日本に対し、諸外国が開国を迫り、さらに日本を植民地化しようという動きがありました。これに対し、危機感を抱いた勝海舟、吉田松陰、坂本龍馬をはじめとする多くの志士が力を合わせ、日本を救いました。彼らには、諸外国から日本を守らなければならない、という熱い情熱がありました。
2つ目の危機は、第2次世界大戦での敗戦でした。大きな打撃を受けた日本経済を、皆さんのお父さんやお母さんよりも上の世代の方たちが復興してくれました。それこそ、額の汗をぬぐう暇もないほど仕事に取り組み、工業生産を増加させ、品質向上を達成し、日本の製品が世界中で売れるようになりました。この復興を目指した情熱は、世界の歴史上に燦然と輝くものです。
私は、この度の大災害に対しても、日本は力強く復興すると信じています。ただ、この度の大災害は、本当にとてつもない災害です。復興には、5年、10年とかかるでしょう。だからこそ、この復興には、皆さんのような若い力が必要なのです。今日、大学・大学院に入学したばかりの皆さんですが、卒業する時にも、皆さんの力が復興には欠かせない状況だと思います。そこで皆さんには、本学において、基礎学力、語学力、専門的な知識や技術をしっかりと身につけ、「ものづくり国家日本」の再生に貢献してもらいたいと願っています。
そして、基礎学力などと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのは、人間性や倫理観、さらに加えて情熱だと思います。日本人はこれまで、手先の器用さや少しでもよくしたいという向上心によって、様々な技術を開発してきました。この力を支えていたものは、人間性、倫理観、情熱です。
さらに、日本人は、こういった素晴らしい力を個人個人だけが発揮するのではなく、集団としてまとめあげるというところに特長があります。他人を踏みにじってのし上がろう、競争に勝てばよいのだ、という心から生まれてくる力ではなくて、皆で力を合わせて困難を乗り越えようという、結束力、団結力があります。皆の力を合わせて大きな燃えるような情熱へ繋がっていく。これが復興への大きな原動力となるのです。
本学園の教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』という言葉には、自分のことだけを考えていては人生の成功はない。人間はいつの時代でも、燃えるような情熱を持って、真面目に、一生懸命に努力を重ねること、そして、少しばかりの成功に酔いしれることなく、謙虚さを忘れないことが大切である。そういった心の持ち方が、周りの人、社会への奉仕につながっていく。そうすることによって、自分だけでなく、他人も社会も幸せになるのだ、ということを私たちに教えてくれています。

広島工業大学では、この教育方針から「社会・環境・倫理」という三つのキーワードを掲げています。「社会と環境を思いやり、高い倫理を持った技術者」を育成していくことを目標としています。これらは、いつの時代でも求められている人間の姿です。
今日から皆さんには、建学の精神、教育方針、社会・環境・倫理という三つのキーワードに基づいた教育を展開してまいります。基礎教育、専門教育をしっかりと学び、高い倫理観を持った人間として、大きくたくましく成長されることを楽しみにしています。そして、やがて皆さんが技術立国日本の復興に貢献されることを期待し、本日の入学に際しての式辞とします。

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