学習成果とGPAの活用

関西国際大学 学長   濱名 篤氏   講演会

講演日 :2007年8月24日(金)
講演場所:広島工業大学

上記の通り開催されました、平成19年度「第1回全学FD研修会」においての、濱名氏の講演内容の一部をご紹介いたします。

学習成果とGPAの活用

今大学に求められているものは、"学習成果の実証"です。「どの学部のどの学科を卒業したか」「何を学んだか」ではなく、学生に知識やスキルをできるだけ獲得させ、どれだけ成長・変化させたのかということ、すなわち「何ができるようになったか」が大事なのです。

さて、現在GPAを採用しているのは、日本の大学の約35%です。しかし、その主な用途は、奨学金や授業料減免の選考資料や、個別の学習指導への利用にとどまっています。

本学(関西国際大学)では多様な学生が入学することにより、ユニバーサル化の影響が来ると考え、当初から、ICU(国際基督教大学)と青森公立大学をモデルとしたGPAを導入しました。

また、アメリカでは、AO選考とGPAと学習支援がトライアングルになっているということを知っていましたので、本学では「AO」「GPA」「学習支援」の3つを同時に導入しました。

本学では一応外部向けとして成績証明書に「優」・「良」・「可」・「不可」を使っておりますが、同時にGPA制度のための基準も採用してます。GPA制度は科目ごとの成績に単位数を加味した加重平均で全体の成績を表わそうとするものです。意義としては、成績評価をより明確にし、個々の学生の学習指導に役立てることを目的にしています。また、GPAは学業成績優秀者の表彰や学内における各種奨学生の選考の際の資料にします。

それと、キャップ制との関係ですが、履修にあたって、登録単位数に上限を定めています。1年の春学期が22単位ですが、それ以降は、前の学期のGPAに応じて上限単位数を、26単位から20単位に制限しています。

さらに、GPAと「退学勧告制度」を導入しています。各学期のGPAが共に1.00未満、つまり2期連続1.0を割った場合には、学部長が保護者同席のところで厳重注意します。特例として、1年生最初の1学期のGPAは退学勧告の対象から外すということにしました。

また、退学勧告を受けた学生が、"一定の学習水準に達するために特別履修を行う学期"として、平成19年4月に"特別履修生制度"を作りました。半年限定で、上限は2年まで。さらに継続を希望する者は半年ごとに願い出ることとしました。なお、特別履修期間は卒業研究など特定科目の履修制限をしています。 特別履修期間の終了の基準は、1学期間に15単位以上、累積GPAが1.50以上履修することが条件となります。

卒業研究については、まず累積GPAが1.50以上でかつ既修得単位数が80単位以上であることを条件とします。

ここで、「日本におけるGPAの運用上の問題点」についてあげてみますと、"学習到達目標の共有""成績評価基準の共有""形成的評価を踏まえた評価機会の設定"などがあります。

また、"シラバスにどこまで学習計画が具体的体系的に書かれているか?"という問題ですが、やはり最近のOutcome assessment を意識しているシラバスを見ますと、非常にクリアに"何ができるようになるか"を科目の到達目標として書かれているのが一般的です。

次に学生支援・学習支援についてです。入学前プログラムの効果はいろいろ言われていますが、一番効果的なのは入学前教育に参加した生徒が、入学式に来たときにすでに知り合いがいることなど不安を取り除くことです。

また、学生支援・学習支援の必要条件としては、まず"多様性に対する重層的な支援体制"。ひとつだけでは駄目で、やはりリスク・マネージメントを何重にも重ねていく必要があるということです。2番目は、学生をたらいまわしにしない、"学生の支援窓口を統一化する"こと。3番目は"学生の発達段階に見合った継続的支援"です。そのためには組織的な取り組みが重要となります。

それと、"キャリア形成支援"。手厚い支援をやればやるほど学生が自立しにくくなるという学習支援の難しさもありますが、学生自身が"成長"を実感できるようにということが非常に大事なのではないかと思います。

まとめとしまして、グローバル化時代にGPAは不可避です。もういまさら後ろには戻れません。GPAの運用においては、グローバルスタンダードに準拠する事が基本です。GPAを機能させるためには、賞罰両方で使わないと駄目ですが、使えば使うほど効果が現れます。学生達はいつの間にかGPAで物事を考えるようになります。そして選抜度の低い大学では、運用上の工夫や学生支援が不可避です。

しかし、GPAだけ取り入れて問題解決することは絶対ありません。学士課程教育全体、ひいては日本全体の問題として、大学全体、個々の授業などの最終的な到達目標に到る共通の評価尺度のひとつとして活用していただく際に、GPAは学習成果の測定のためのひとつに過ぎないということを間違えないようにお願いしたいと思います。